読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

snaka0213のブログ

都内の大学院にて数学の研究に取り組んでいます.

大隅良典先生ノーベル賞受賞記念講演会に参加しました

先日,東京大学駒場キャンパスにて,東京工業大学栄誉教授の大隅良典先生による講演会が開催されました.大隅先生は2016年のノーベル生理学・医学賞を受賞されたことで,昨年は各種報道でも大きな話題を呼びました.今回の記事では手元のメモと記憶を頼りに,講演会の内容について出来るだけ詳しく書き起こしてみようと思います.

 

大隅良典先生ノーベル賞受賞記念講演会・交流会のお知らせ | イベント | 東京大学

 

参加申し込み

この講演会を知ったのは研究科の事務から回ってきたメールがきっかけでした.メールを受信した2日後に登録フォームにて参加申し込みをしたら,なんと登録番号が430番と後ろの方でした.講演会の定員が550名で申し込み順であったことを考えると,もう一日でも申し込みが遅れていたら参加できていなかったかもしれません.

 

なお,本講演会終了後には交流会も予定されていました.交流会はさらに定員が絞られて200名しか参加できません.私はこちらにも参加申し込みしていましたが,残念ながら参加不可となってしまいました… *1

 

講演会当日

 

 

会場は駒場キャンパスの900番教室でしたが,定員が550名ということで席を詰めてもほぼ満席の状態でした.見た印象では教養学部の1年生,2年生が多く参加していたようでした.

 

講演会の内容

注意 : 以下,講演会の内容は全て筆者が残したメモと記憶を頼りに復元しています.実際の内容と異なる点が生じている可能性があることをご了承下さい.

 

定刻になって講演会が始まると,司会による挨拶と大隅先生のプロフィール紹介,そして学生によるパイプオルガンの演奏が行われました.これらのオープニングが終わった後,大きな拍手と共に大隅先生が会場に迎えられました.マイクに向かって開口一番,「受賞後は忙しい日々を送っており,そろそろ普通の生活に戻りたいと感じています」とおっしゃっていたのが印象に残っています.

 

学部生時代から研究者になるまで

講演が始まって最初の話題は,大隅先生ご自身の「経歴」について.先生は大学入学時から漠然と化学に興味があったようで,その頃の夢は「化学者になること」だったそうです.しかし,当時の教養学部に新設された基礎科学科に興味を持つようになり,分子生物学を専攻するようになったようです.講演は以降,分子生物学の基本的事項の説明から始まり,そして今回のノーベル賞受賞が決まった研究テーマである「オートファジー」の説明に移ります.何だか久しぶりに生物学の講義を受けている気分になりました (笑) 非常に多くの図と共に解説がされていたのでメモは全て取りきれませんでした.なので,オートファジーに関する詳しい解説は他の文献に丸投げすることにします,ごめんなさい…

 

後半は私の勉強不足であまり頭に入ってきませんでしたが,研究内容について説明を聞いて気づいたのは,大隅先生が研究テーマを決める際はどれも「知的好奇心」が原動力となっていたことです.先生は昔から人と競争するのが嫌いだったそうで,どうせやるなら人と違うことをやろうと思い,自分が好奇心を持っていた液胞の研究に取り組んだ,と説明していました.オートファジーの研究が始まった当時は論文数も少なかったそうで,30年経ってようやく多くの研究者から注目を集めるようになり,次第に論文数も増え始めたようです.当日の講演会ではスライドを用いて「オートファジーに関連する論文数」の推移を表すグラフを見せてくれたのですが,確かに30年後になってやっと指数関数的に増加している感じが一目瞭然でした.

 

若者へのメッセージ

講演は最後に「若者へのメッセージ」という題名のスライドで終わりました.丁度その直後に質疑応答の時間に移ったため,スライドはしばらく表示されたままの状態で残してくれました.メッセージの内容を一字一句正確にメモすることができたので,その内容を以下に記します.

 

  1. 長い人類の歴史の中で考えよう
  2. 自分の興味,抱いた疑問を大切にしよう
  3. 自分の小さな発見を大事にしよう.論文や溢れる情報からではなく,自然,現象から出発しよう
  4. 短期的だけでない課題を見つけよう
  5. 流行りを追うことはやめよう.競争だけが科学の原動力ではない
  6. 人と違うことを恐れずに,自分の道を見極めよう
  7. "役に立つ"とは何か考えよう
  8. 自分の研究の理解者 (ファン) を出来るだけ周りに作ろう 

 

質疑応答

質疑応答では主に教養学部の学生が中心に手を挙げて色々と疑問を先生にぶつけていました.メモに残っている限り,その質疑応答の内容も書き起こしてみようと思います.

 

質問 1

質問1 : 英語で論文を読み書きしなければならないから,日本人は科学の世界で不利なのではないでしょうか?

 

自分も学部生の頃に似たようなことを疑問に持っていた気がします.あの頃は若かった (笑) それに対する大隅先生の解答は,

 

解答1 : いや,英語が出来るからといって科学ができるわけではない.日本は昔から母国語で高等教育を受けられる環境に恵まれているので,そこを大切にしていきたいと考えています. 

 

というものでした.なるほど,最近はグローバル化が広く叫ばれている影響で,講義を全て英語で行う試みをしている大学も出てきました.例えば,大隅先生が在籍している東京工業大学では,教育改革の一環として大学院の専門科目を全て英語で講義するように変わったそうです.

 

www.titech.ac.jp

 

世の中全体がグローバル化の流れになりつつありますが,母国語で高等教育が受けられる機会は今後も大切にしたいですね.

 

質問 2

質問2 : 私も科学者を目指しています.勉強のアドバイスをお願いします.

 

これ,あまり正確な質問内容を覚えていないのですが,確かこんな感じだったかと (笑) 対する先生の解答は次のようなものでした.

 

解答2 : 勉強は自分の本当に興味を持っている所を主体的にして欲しい.あと,若いうちに留学を経験して欲しいと考えています.私は海外に滞在した経験が過去にありますが,研究設備が遥かに充実していたのを見て圧倒された覚えがあります.また,異文化で違う考え方を持つ人と会うことは大事なことだと思っています.

 

私は海外旅行に行くことはあっても,これまで長期的に留学した経験はありませんでした.研究室にいる留学生と話をしていると思いがけない視点からアイデアを貰ったりすることもあり,異文化交流は確かに大切だと日々痛感しております.

 

質問 3

質問3 : 「メッセージ」 の中に"役に立つ"とは何かを考えようとありますが,大隅先生は"役に立つ"とはどのように考えているのでしょうか?

 

 これに対する解答が素晴らしいものでした.

 

解答 3 : 私は若者に対して「役に立ちたい」とは言ってはいけない,と言っています.「役に立つ」とは何年後のことか,よく考えて欲しい.なお,大学の役割は基礎研究を行うことですが,日本の大学は非常に苦しい状況にあると思っています.

 

大隅先生がノーベル賞を受賞して各種報道機関からインタビューを受けるとき,何回も「基礎研究」という言葉を発していました.それをきっかけに,「基礎研究とは?」と疑問に思って調べた人も多いのではないでしょうか.以下の Googleトレンドの結果がその様子を如実に表しています.*2

 

f:id:snaka0213:20170402155208p:plain

 

また,Wikipediaに載っている「基礎研究」の説明が今回の内容と被るところが多かったので,ここで引用しておきます.

 

基礎研究 (きそけんきゅう,英語 : fundamental research) は,基本原理の理解を向上するために進める研究.それらはじかに,あるいは即座に商業的な利益を生み出すことを意図しておらず,知識欲や好奇心から生じるものと考えることができる.しかしながら,長期的には商業的な利益や応用研究の基礎になるものである.基礎研究は主に大学や国家組織の研究班によって行われる.

 

大隅先生の研究も「知的好奇心」が原動力でした.私も現在は純粋数学の研究に取り組んでいますが,それも「これが知りたい,あれが知りたい」という動機付けがあって研究しているものです.それが「直ぐに役に立つ」ものではないものの,学術的知識の可能性を広げることは「やがて役に立つ」ものであると信じています.また,ここでいう「役に立つ」研究というのは,応用研究が目的としている何か目に見える成果物を出すタイプの研究に限らず,基礎研究のような他分野に対して何かしらの影響を与え,やがて応用研究の基礎となるタイプの研究もあります.実際にそうやって,オートファジーの研究は医療分野への応用の基礎として役立ち,純粋数学の研究は50年後,100年後には幅広い範囲の分野でいつの間にか利用されてきました.「役に立つ」という言葉の意味をもう一度考え直させられる,とても深い解答だったのではないでしょうか.

 

質問 4

質問4 : 「メッセージ」の中に競争だけが科学の原動力ではない,とありますが,それでは科学の原動力とは何でしょうか?

 

これに対する解答は,

 

解答 4 : 好奇心が科学の原動力だと思っています.若者には,自分が流行りを作るんだという気概を持って,自分の興味を追究して研究に没頭してもらいたいです.

 

というものでした.大隅先生の研究も好奇心が原動力になっていた,という話は先ほどもしました.自分も研究で「流行を作る」という意識が持てるくらい大きな進捗を出したいです (笑)

 

次が最後の質問になります.

 

質問 5

質問5 : 私は文系の学生なのですが,科学の発展に際して文系出身者に求めることは何でしょうか? 

 

この質問が出た時はハッとさせられました.確かに,講演会の会場が駒場キャンパスにあったので,当日は文系を含む教養学部の学生が多く集まっていました.大隅先生が学生時代に多くの時間を過ごされた場所でもある,ということで駒場キャンパスを会場に選んだのだと思いますが,もしかしたら「文系の学生にも多く参加してもらう」という別の目的もあったのでしょうか.これに対する解答は,

 

解答 5 : 科学の重要性をちゃんと理解して欲しいと考えています.科学は人間の文化であって ,技術とは違うものです.また,文系と理系という分け方はをしているのは日本だけです.文系理系出身関係なく,各々が役割を持って人類の発展に貢献して欲しいと思います.

 

というものでした.大隅先生は,ノーベル賞受賞後のインタビューなどでメディアを通して「基礎科学の重要性」を頻繁に訴えていた印象があります.一言では説明できない研究の重要性を多くの人に理解してもらうには,すでに大学を卒業した成人に直接伝えるよりも,このような講演会を通して若い学生のうちに意識させる方が遠回りに見えて実は一番の近道なのかもしれません.

*1:登録フォームの注意事項に「学部前期課程在籍者を優先する場合があります」と書かれていました.確かにその条件だと当選は厳しそうですね (笑)

*2:ノーベル賞受賞者が発表されたのが2016年10月3日で,その後インタビューが殺到しました

ブログ始めました

挨拶

初めまして,snaka0213 と申します.ブログを始めてみました.

 

自己紹介

現在は都内の大学院にて数学の研究に取り組んでいます.

研究テーマは「4次元多様体論」という純粋数学の一分野です. *1

 

ブログの内容

このブログでは,主に以下のテーマで,月一回の更新を目標に記事を書いていこうと思います.

  • 自分が勉強した内容のまとめ *2
  • 参加したイベントの記録 *3

 

宣伝

早速,明日 (2017/04/01) になったら記事を一本投稿しようと思います.

 

終わりに

以上です.どうぞよろしくお願い致します.

*1:キーワード : Kirby 計算,ゲージ理論,異種微分構造

*2:勉強テーマは数学,情報科学が中心になりそうです

*3:イベントの具体例 : 講演会,勉強会,競技会 など